2017年10月1日「ホワイトラビット」を読みました。
感想 <ホワイトラビット>
またまた、伊坂さんに「まいりました」と申し上げます。
騙されてしまいました。
騙されることが、こんなにうれしいなんて、伊坂さんの小説でしか味わえない感覚です。
黒澤は、中村と今村の二人を「言われたこともできない二人組」と思っています。
「打合せの内容を守らない」「簡単な段取りすら守ることができない」ことに、呆れを通り越し、感心するくらいであると、黒澤には思われている二人組が、この人質立てこもり事件では、黒澤の指示通りに活躍しているじゃないですか。
わたしは、すっかり、この空き巣たちに騙されてしまいました。
この小説で、特徴的なのは、語り口だと思います。
「俺」が語る兎田目線の章、「私」が語る春日部課長代理の章、この二つに加えて、作者が語るという章があるのです。
稲葉が綿子に苦痛を与える場面では、『何とも不愉快な場面で、まことに心苦しい』と、書かれています。
まるで、作者・伊坂さんが恐縮しているかのようです。
この作者目線の語りは、わたしが迷子にならないように誘導してくれます。
誘拐事件、空き巣事件、立てこもり事件の場面。
1カ月前、現在、数時間前、数年前。
場所と時間を移動することが多いのですが、作者の語りが、混乱を防いでくれます。
それだけではなく、その語り口が面白く、思わず突っ込みを入れたくなるのです。
「えっ、それでどうなったの?」「なにそれ?」「あなたは何者?」
また、ポテチ登場組の「黒澤・中村・今村・若葉」の4人組がいい味です。
抜けているのか、真面目なのか、その会話と行動のおかしさは、わたしの期待を裏切りません。
わたしが、黒澤が出てくる話をおもしろいと思うように、書いていらっしゃる伊坂さんご自身も、「書いていて楽しい」らしいです。
インタビューで、このようにおっしゃっています。
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黒澤が出てくる話も書いていて楽しいのでまた作りたいです
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ぜひ、また書いていただきたいですね。
また、このインタビューでは、このようなこともおっしゃっています。
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『ホワイトラビット』に出てきたある人物の話も、
書いてみたい気持ちはあるんですよね。
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さて、どなたのことでしょう?
そこも想像が膨らみ、期待も膨らみます。
あらすじ <ホワイトラビット>
誘拐をビジネスとする組織があり、その組織の金が搾取されてしまいます。
犯人は、オリオン座の話ばかりするので「オリオオリオ」と呼ばれている折尾です。
組織は、オリオオリオの行方を探すよう、同じ組織内の兎田に命じます。
しかも、その命令は、兎田の妻・綿子を誘拐し、期限を切るというものでした。
愛する綿子ちゃんを救うため、兎田は懸命になります。
ところが、ハプニング続出です。
仙台での人質立てこもり事件へと、兎田も想像していなかった展開となります。
事件解決のために、特殊捜査班SITが、犯人と交渉をします。
さらに空き巣たちが、その町で、盗みを計画したために、巻き込まれてしまいます。
登場する人物たちそれぞれの、心に抱えているものも徐々に、明らかになります。
『開き直って、立ち向かうべきだったんだ』
事件の解決とともに、それぞれが、強く生きていくことを選択するのです。
旧「紙飛行機文庫」に書いた「ホワイトラビット」の感想はこちらです。
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単行本 ホワイトラビット
出版社 新潮社
発売日 2017年9月22日
文庫本 ホワイトラビット (新潮文庫)
出版社 新潮社
発売日 2020年7月1日