2015年3月3日「火星に住むつもりかい?」を読みました。
感想 <火星に住むつもりかい?>
ヒーロー捜しのお話です。
一体、ヒーローは誰なのでしょうね。
「全員は助けられない」
久慈羊介の頭にある教訓です。
そうなんですよね。
バットマンでも、仮面ライダーでも、全員を助けることはできないのです。
だから、ヒーローは彼だ!とひとりに限定できないのではないでしょうか。
ツナギ服の男もヒーローです。
ただ、ヒーローは彼だけではないと思うのです。
真壁鴻一郎も、刑事部長もヒーローでしょうし。
真壁さんから信頼できると言われている二瓶さんもヒーローかもしれません。
罪悪感から金子教授の手伝いをするようになった臼井彬もそうかもしれません。
きっと、わたしのまわりにも、わたしを助けてくれるヒーローがいる。
そう思えるお話でした。
平和警察のすることが残虐で、住民たちも、お互いを監視し合うような街になり、読むのがツラくなるほどの怖さがありました。
でも、ちゃんと強い気持ちを持った人もいてくれました。
平和警察と戦ってくれるヒーローたちの行動に救われた気持ちになります。
怖さと安堵のバランスがとれたお話でした。
一番最初に読んだとき、第1部あたりは怖くて、早くこの場面から逃げたいと思いました。
そして、読み終えてみると救いのある話にホッと安堵して。
落ち着いた気持ちで、もう一度最初から読み返しました。
すると、どうやら恐怖のあまり読み飛ばしていた部分がたくさんあったようで、
「あら、こんなことが書いてあったのね」ということがたくさん出てきました。
2度、3度と読むと張られた伏線にも気がつき、その瞬間にはニヤニヤするわたしがいました。
何気なく、ちりばめられた言葉や描写が、ラストに向けての伏線だったと気がついたとき、ああ、なんてスゴイと、いつもながらにうれしくなってきます。
わたしにとってのヒーローは伊坂幸太郎さんですね。
ありがとうございます。伊坂幸太郎様!
あらすじ <火星に住むつもりかい?>
第1部から第5部までありますが、それぞれの部のページ数にばらつきがあります。
ページ数で言うと、第1部から第3部までが約8割を占めます。
それに比べると、第4部と第5部は短いです。
第1部
残虐な平和警察と魔女狩りのようなエピソードがいくつも出てくる怖い話
第2部
刑事・二瓶が「私」として語る形で進む、正義のヒーローを警察が追いつめる話
第3部
理容師・久慈羊介が自身が起したことのすべてを語る手記による話
第4部
平和警察の刑の執行が行われる広場がパニックになる話
第5部
正義の味方のヒーローたちの話
平和警察が行っている拷問や処刑、魔女狩りのような住民同士の相互監視。
このエピソードが次々と出てくる第1部は、読んでいてツラくなってきます。
それが、真壁鴻一郎という優秀な刑事でありながら、どこかとぼけたところのある男の登場により、空気が変わってきました。
さらに、久慈洋介の手記でいろいろな事実が明らかになりますが、そこでは終わりません。
もっと新しい展開があり、その上、終盤になると、えっ、そうだったの?というラストへと一気に向かいます。
楽天ブックス 著者インタビュー > 伊坂幸太郎さん「火星に住むつもりかい?」
旧「紙飛行機文庫」に書いた「火星に住むつもりかい?」の感想はこちらです。
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単行本 火星に住むつもりかい?
出版社 光文社
発売日 2015年02月17日
文庫本 火星に住むつもりかい?
出版社 光文社
発売日 2018年4月12日