2014年12月12日「キャプテンサンダーボルト」を読みました。
感想 <キャプテンサンダーボルト>
『握った拳をグッと突き出し、そのまま、「ウオオオオ」と感動の唸り声をあげていた』
相葉時之と井ノ原悠が「鳴神戦隊サンダーボルト」の映画を観たときのことです。(P207)
わたしがこの本を読み終えたとき、まさにこんな感じでした。
伊坂幸太郎さんと阿部和重さんの合作。
そう聞いたとき、おふたりが交互に書いていく形で、どちらがどこを書いたのか、ハッキリとわかる小説をイメージしていました。
ところが、わたしの想像とは違って、ひとつの長編として融合されていたのです。
わたしには、伊坂和重さんとか、阿部幸太郎さんという人物がいるのではないかと思えました。
カウントダウンが終了したとき、井ノ原悠が自分のデジタル時計で時刻を確認します。
その時刻が「9:11」というところは、震える思いでした。
テロと9・11という数字は、わたしの脳内では結びついていますから。
この小説に出てくる銀髪の怪人のいるテロ集団の本気度が伝わってくるようで怖かったです。
その銀髪の怪人は、スマホの音声アプリを使ってしゃべります。
この小説では、スマホが大活躍だなあと思いました。
スマホを使っていないわたしは、そんなこともできるのか、すごいなスマホ!と感心しました。
登場人物たちの会話の中では「スマホ」と言いますが、
会話以外の文では「スマートフォン」と書かれていて「スマホ」とは略されていませんでした。
そのように言葉ひとつひとつが丁寧な印象を受けました。
戦うシーンなどでは、それはそれは描写が丁寧で、誰がどう動いたのかが見えるようでした。
詳しく丁寧に書いてあるため、その分、行数が多いと思います。
そうなると、読んでいるわたしにとっては、時間がかかっているはずなのですが、実は逆で、その文章にはスピード感があり、それにつられるように、自分の読むスピードが上がっていくのがわかります。
その先が気になって、気になって仕方がないのです。
序章から、だんだんと加速して、終盤は最高速度を記録するくらいの勢いになり、そして、終章ではその上がった息をゆっくりと落ち着かせてくれるようなハッピーエンドでした。
愉しいお話をありがとうございました。
伊坂幸太郎様。阿部和重様。
あらすじ <キャプテンサンダーボルト>
伊坂幸太郎さんと阿部和重さんの合作による小説です。
この小説は、序章から始まり1・2・3~11と章が進み、終章で終わります。
文藝春秋BOOKSのインタビューでの阿部さんによると、「いちおう章ごとに担当が決まっている」のだそうです。
章ごとに担当が違うという視点で読んでいくと、ああ、なるほど。
この章は伊坂さんかな、次のこの章は阿部さんかな、と思えてきます。
そういう読み方も、この小説の楽しみ方のひとつかもしれません。
とは言うものの、どちらが書いたか、どちらが担当かということより、ストーリーを追う気持ちの方が強くて、話の展開が楽しかったです。
元野球少年の相葉時之と井ノ原悠は、それぞれ諸事情によりお金を必要としていました。
その金策の為に走り回っているうちに、ふたりは同じ事件に巻き込まれます。
元戦隊もののヒーローである赤木駿、父親の死を不審に思う桃沢瞳、そして犬のポンセの力を借りて、テロ集団の一員・銀髪の怪人と戦うお話です。
旧「紙飛行機文庫」に書いた「キャプテンサンダーボルト」の感想はこちらです。
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単行本 <キャプテンサンダーボルト>
出版社 文藝春秋
発売日 2014年11月28日
文庫本 <キャプテンサンダーボルト>
出版社 文藝春秋
発売日 2017年11月9日
出版社 文藝春秋
発売日 2017年11月9日
出版社 新潮社
発売日 2020年10月1日