2019年4月27日「シーソーモンスター」を読みました。
感想 <シーソーモンスター>
螺旋プロジェクトによる、昭和後期と近未来の物語です。
「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の2つの中編が収められています。
その中に、手紙と絵本が出てきます。
普段から、それらを愛しているわたしは、さらにわくわく感が増しました。
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恐ろしい事件や感動的な出来事が起きれば、人の心は動く。
むかし、無差別爆撃にショックを受けた芸術家が絵を描いた。
その絵を観た人間の心がまた動く。
未来を創るのは、情報と事実だけじゃない。
むしろ、人の感情だ。
(P426)
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手紙や絵本も、人の心を動かすものかもしれません。
また、それらだけではなく、小説も読後に計算できない感情が生まれます。
「シーソーモンスター」も「スピンモンスター」も、読後、優しい気持ちがわいてきました。
どういうこと? どうなるのかしら? どうなってるの?
その謎が解明されてよかったという思いだけではなく、心穏やかになるラストでした。
この読後感の良さを味わいたくて、伊坂幸太郎さんの本を読んでいます。
あらすじ <シーソーモンスター>
8作家による螺旋プロジェクトという企画が「小説BOC」1号~10号に連載されました。
伊坂幸太郎さんは、昭和後期の「シーソーモンスター」と近未来の「スピンモンスター」をお書きになっています。その2作が単行本になったのが、この「シーソーモンスター」です。
螺旋プロジェクトについての詳細は、中央公論新社様のこちらのページからどうぞ。
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「シーソーモンスター」
ローラースケート付きで歌って踊れるアイドルグループのヒット曲が流れていた昭和後期の物語です。
嫁姑の摩擦問題という家庭内の対立から、米屋と蕎麦屋の工作員による国際的な対立、不正を正す気持ちと見て見ぬふりをするという心の対立まで、いつくかの対立が描かれています。
合言葉は「明日の日本に着くまで」でした。
(P36)
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「スピンモンスター」
自動車の自動走行が当たり前になる一方で、重要なことに関してはデジタルとかネットとかを使わないほうがいいよね、というのが共通の認識となった、近未来の物語です。
絵本作家のせつみやこが書いた「アイムマイマイ」は、カタツムリが活躍する絵本です。国民的なキャラクターの主人公マイマイが発する定番の台詞は「争わないほうが好ましい」です。
「争いはなくならない。だけど、折り合いをつけて生きていくしかない」と、せつみやこは言います。
寺島テラオは「昨日の日本に」と言って姿を消しました。
(P202)
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昭和後期では「明日の日本に」
近未来では「昨日の日本に」
変化があって、はじめて人は進化する
(P309)
平和は努力しないと現れない。
(P225)
明日の日本へ向かって、変化することも大切です。
また、平和に向けて努力してきた昨日の日本も大切に思います。
対立と平和のバランスを描いた物語「シーソーモンスター」「スピンモンスター」です。
「ダ・ヴィンチ」伊坂幸太郎さんと朝井リョウさんの対談はこちらです。
旧「紙飛行機文庫」に書いた「シーソーモンスター」の感想はこちらです。
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単行本 <シーソーモンスター>
出版社 中央公論新社
発売日 2019年4月5日
文庫本 <シーソーモンスター>
出版社 中央公論新社
発売日 2022年10月21日