「さよならジャバウォック」を読みました。
2025年10月27日 感想を書きました。
ネタバレ・本文引用を含みますので、未読の方はご注意ください。
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感想 <さよならジャバウォック> 【量子】
この小説も、伊坂幸太郎さんらしく、登場人物の名前がユニークです。
感情をあらわにはしないものの正義感と力強さを持つ、クールな「かつらこごろう」は、桂小五郎という漢字ではなく「桂凍朗」です。
タロウとハナコも「太瀧」と「葉奈子」ですし。
足が速い女の子は「燕」ちゃん。
「破魔矢」と「絵馬」の夫婦。
「伊藤北斎」は伊藤若冲と葛飾北斎を掛け合わせたように思えます。
ユニークな名前のおかげで、「これ誰だっけ?」の迷子になることがありません。
その中で、気になるのが「量子(りょうこ)」さんです。
「量子(りょうこ)」という名前の漢字を見たとき、物理学の「量子(りょうし)」という言葉に見えました。
物理学でいうところの「量子(りょうし)」は、粒子と波の二つの性質を持っています。そして、観測されるまで状態が決まらない性質もあります。
この物語での「量子(りょうこ)」さんは記憶と現実にずれを感じ、何が真実なのかわからず、心が波のように揺らぎます。その不安定な状態を様々な人に観測されながら、現実の形を取り戻していくのです。
りょうこ = 量子 = りょうし = 量子
こんな図式を頭に思い浮かべながら、物語を読み進めました。

感想 <さよならジャバウォック> 【母親】
量子さんは思います。
『ただいま、と言う息子を「おかえりなさい」と迎えなくてはいけない』と。
息子を誰よりも大切に思っている母親なのです。
自分自身が母親である一方で、自分も母親を頼りにして、とても感謝しています。
『お母さんの娘で良かった』と言うのです。
伊坂幸太郎さんの「あるキング」に出てくる言葉を思い出しました。
『母親に代打は送れない』
伊坂幸太郎さんの作品に描かれる家族愛に、いつも心が熱くなります。

感想 <さよならジャバウォック> 【25周年】
思い出すのは「あるキング」だけではありません。
「逆鱗」だったり、「落ちてくる少年をキャッチする」だったり、別の作品をふと思い出すフレーズもありました。
「辞書を持っていた身体の大きな女性」は、あの人かしらと想像します。
何より『おかえりなさい』と言いたくなったのは、田中徹でした。バスケット選手の田中徹は、バスの事故が原因で後遺症が残り、左足を引き摺るのですが、とても見事な活躍をします。
田中徹の登場のように、長年、伊坂さんの作品を読み続けてきたファンに対する、伊坂さんからのサービス精神は、とてもうれしいです。
伊藤北斎が、25年ぶりに歌を披露する場面があります。
この「25年ぶり」という年数と、伊坂幸太郎さんのデビュー25周年が重なります。
斗真は、かつて北斎の大ファンであったにも関わらず、北斎を攻撃する側に回り、引退へと追い込んだ一人です。その彼が、今では北斎のマネージャーを務めているのです。いろいろあったけど、今では斗真が北斎の一番の理解者であり、ファンであることは間違いないでしょう。
伊坂幸太郎様
デビュー25周年おめでとうございます。
わたしたち読者を楽しませてくれる作品をずっと書き続けてくださいました。
新しい作品が出る度に、伊坂さんはまるで「ただいま」とおっしゃっているようです。
ファンであるわたしは「おかえりなさい」「お待ちしていました」とお迎えする気持ちです。
ありがとうございます。
感謝を込めて、感想を書かせていただきました。
●「さよならジャバウォック」好きな言葉を「365日 本棚のしおり」に書きました



特設サイト <さよならジャバウォック>
あらすじは、双葉社様の特設サイトをご覧ください。
インタビュー <さよならジャバウォック>
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単行本
さよならジャバウォック
出版社 双葉社
発売日 2025年10月22日
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