2014年2月9日「首折り男のための協奏曲」を読みました。
感想 <首折り男のための協奏曲>
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「協奏曲」<世界大百科事典 第2版の用語解説より>
単数または複数の独奏楽器とオーケストラからなり,両者の対比と調和を構成原理としつつ,多かれ少なかれ独奏者の演奏技巧を発揮させるように作られた楽曲。かつては競奏曲とも書いた。
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「首折り男のための協奏曲」
ほんと、ほんと。このタイトルがぴったりでした。
ピアノの話を最高に盛り上げるかのように、他のオーケストラの話があり。
そしてそれは、最高のピアノの音を聴きたいと願った首折り男のためのものであり。
なんて素敵なつながりなんでしょう。
この本の巻末に、伊坂幸太郎さんがこう書いていらっしゃいます。
「首折り男なる人物の話であったものが、いつの間にか黒澤という泥棒の話に変化していき、それがまた首折り男に繋がり」という不思議な本になりました。
最初の「首折り男の周辺」が最後の「合コンの話」とつながるところが最高でした。
それぞれ7編が単品ですでに刊行されたもの。それをこんなに楽しくつなげることができるなんて。
読んでいてわくわくさせられました。
「僕の舟」の中で、黒澤が思い出話に合わせて元素記号を並べるシーンがあります。
若林絵美は「こじつけね」と笑うのですが、うれしそうです。
「驚いたか」「ちゃんと元素記号の並び通りになる。発見だろ」と黒澤も楽しそうです。
このシーンを読んでいて、わたしは伊坂幸太郎さんも、この黒澤の気持ちに似たものがあるのではないかしらと、想像しました。
刊行記念インタービューで、こうおっしゃっていますから。
今回、全作に亘って書き直してみて、面白いつながり方になったなと、自画自賛しています。
自画自賛。まるで黒澤が若林絵美に並びの発見を自慢した時のようです。
きっと伊坂幸太郎さんも、並びやつながりに自信を持っていらっしゃるのだと思いました。
伊坂幸太郎さんご自身も自信作でいらっしゃる「首折り男のための協奏曲」を、わたしも最初から最後まですべてを楽しませていただきました。
ありがとうございました。伊坂幸太郎様。
あらすじ <首折り男のための協奏曲>
「首折り男のための周辺」
首を折る方法で人を殺す男の話
「濡れ衣の話」
車に轢かれるという事故で子供を亡くした男の話
「僕の舟」
夫の介護をしている老女の恋の話
「人間らしく」
クワガタのブリーダーと黒澤の話
「月曜日から逃げろ」
テレビ制作プロダクションの男と黒澤の話
「相談役の話」
仙台の山家清兵衛の話と現代の復讐劇の話
「合コンの話」
男性三人、女性三人の集まりの話
以上7編の短編からなる連作集です。
ただし、すでにそれぞれは単品として出版済です。
それら短編が加筆修正され、ひとつの連作集に仕上がっています。
伊坂幸太郎さんがインタビューでおっしゃっている通り、「趣向の違う話がグラデーションのようにつながっていく」連作集です。
旧「紙飛行機文庫」に書いた「首折り男のための協奏曲」はこちらです。
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単行本 首折り男のための協奏曲
出版社 新潮社
発売日 2014年1月31日
文庫本 首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)
出版社 新潮社
発売日 2016年12月